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田中敏子名誉会長「お別れの会」

■介護食士資格の育成の生涯

 2012年12月11日、本協会名誉会長の田中敏子先生が95歳でお亡くなりになり、2013年2月14日、奈良の若羽学園の講堂においてお別れ会が開かれました。本協会の会長、副会長、専務理事、常務理事は、喪主と共に、お客様をお迎えしました。

 公益社団法人全国調理師職業訓練協会の中心的な事業である介護食士の資格制度は、田中敏子名誉会長が生涯を掛けて取り組まれたものの1つです。

 現在の厚生労働省がまだ、厚生省と労働省の2つに分かれていた頃のことです。
 いまから約70年前、およそ5年間続いた第2次世界大戦のために日本はすっかり衰退しました。敗戦直後の日本人は食料不足に苦しみましたが、一部の日本人は、アメリカ軍への物資供給を通じてお金を儲けました。そして、アメリカ軍軍人とこれらの豊かな日本人は、食べ物に苦しむ日本人をしりめに、高級料亭での飲食を楽しみました。

 しかし、戦後の衛生状態の悪さから、そういう料亭においても食中毒が発生し、これを憂えた厚生省は、食中毒防止のための資格である調理師免許を制定し、その資格者の養成は調理師養成施設(=調理師専門学校)に任せました。調理師養成施設の協会である全国調理師養成施設協会は、国民の健康を管理する厚生省の管轄下に置かれました。
 また、調理師専門学校は文部省の管轄下にもありました。

 一方、調理師は労働者であるという考え方もありました。労働には、調理の労働以外にも多くの分野の労働があります。労働者は労働省の管轄下にありましたから、労働者としての調理師もまた労働省の管轄下にありました。つまり、調理師は、厚生省、文部省、労働省という3つの省庁で三重に管轄されていました。

 労働者としての調理師を育てるのは、全国に存在していた調理訓練校でした。そして、その協会である全国調理職業訓練協会は労働省の管轄下にありました。
 労働省の管轄下にある調理師は、味の追及者であり、世界の料理人が技を競う技能オリンピックにつながりました。

   田中敏子先生の生涯は、労働者としての調理師を、世界の調理人の中にはばたかせることにありました。しかし、労働者としての調理師を養成する施設である調理訓練校は、文部省の管轄下になかったため、思ったほど発展せず、一方、食中毒防止のための資格である調理師の養成を目指す調理師養成施設(=調理師専門学校)はどんどん発展していきました。そして現在、調理師養成施設は、食中毒防止のみでなく、味の追求者としての調理師の養成にも力を尽くすようになりました。

 調理訓練校の伸び悩みを憂えた田中敏子先生は、なんとか調理訓練校を発展させる手段はないものかと考え、全国調理職業訓練協会の事業として介護食士資格認定事業を考えだしました。そして、全国調理職業訓練協会に入会できるのは、調理訓練校のみでしたので、介護食士の教育訓練は調理訓練校でしか出来ませんでした。

 日本は、医学の進歩と豊かな食生活のために、人口の中に占める高齢者の割合がどんどん増加し、高齢化社会、高齢社会、そして超高齢社会と変化していきました。多くの調理師専門学校は、日本社会における介護食士の重要性に気が付き、介護食士の教育訓練を実施したいと考え、全国調理訓練協会への入会を希望しましたが、当時の協会は、調理訓練校以外の組織の入会を認めませんでした。

 やがて厚生省と労働省は1つに統一され、厚生労働省となりました。もはや、当協会に調理訓練校以外の学校の入会を拒絶している理由はなくなりました。定款が改訂され、多くの調理師専門学校が入会するようになりました。

 また、それまで各調理訓練校に任されていてバラバラであった教育訓練内容が統一されました。すなわち、介護食士の資格は、この資格者を採用する全国の介護施設に対して統一的にその資格を保証するものでなければならず、そのためには教育訓練の内容が各校バラバラであってはおかしい、という考えが生まれました。

 協会内に介護食士事業推進委員会が作られ、まず介護食士講座3級の統一教材が作られました。この教材の巻頭に、田中敏子先生は「教本改訂に当たって」という文章をお寄せになりました。

 田中敏子先生はすでに高齢で、その頃から体調を崩されました。私たち介護食士事業推進委員会は、早く2級、1級の教材を完成させたいと思っていたのですが、なにしろ、委員は現役の教員であり、授業の合間をぬっての執筆でしたから、なかなか思うようにはかどらず、とうとう、田中敏子先生に2級、1級の教材をお見せすることが出来ず、いまやっと、2級教材を完成させることが出来ました。
 これからは一層努力して、出来るだけ早い時期に1級を完成させ、3巻揃えて、田中敏子先生の墓前に供えたいと考えています。

介護食士事業推進委員会(あいうえお順)
       
委員長群馬調理師専門学校遠山 巍
委員香川調理製菓専門学校荻原 英子
委員浜松調理菓子専門学校神谷 紀代美
委員女子栄養大学宮澤 貞子
委員新潟調理師専門学校吉田 奈美
特別委員東京多摩調理製菓専門学校井上 好弘(協会会長)
  
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